cat.name

生活者の意識・実態に関する調査を行うトレンド総研では、先日開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)の首脳宣言の内容を受けて、日本における気候変動や地球温暖化対策への意識について調べました。


温暖化対策のターニングポイントになる、2015年12月COP21に向けて…G7サミットの認知・関心とは?ポイントとなる“ベストミックス”について、調査を実施

生活者の意識・実態に関する調査を行うトレンド総研(東京都渋谷区、URL: http://www.trendsoken.com/ )では、先日2015年6月7日~8日に開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)の首脳宣言の内容を受けて、日本における気候変動や地球温暖化対策への意識について調べました。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

[主要7カ国首脳会議(G7サミット)の「気候変動、エネルギー、環境」に関する首脳宣言について]

 

ドイツのエルマウで開催された今回のサミットでは、「2050年までに世界の温室効果ガスを2010年比で40~70%の幅の上方に削減する」という目標が合意されました。地球温暖化対策における1つのターニングポイントとなることが期待されているのが、今年2015年12月にパリで開催される国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)です。京都議定書に続く新しい枠組みが国際的な合意を得られるか注目されています。サミットでの削減目標における同意は、「COP21において合意を採択する」という強い決意を先進国間で確認することで、温暖化交渉で途上国側の譲歩を引き出す狙いがあると言えるでしょう。先進各国における今後の取り組みにも注目したいところです。

こうした中で、省エネ大国である日本においては、総発電量に占める電源ごとの割合“電源構成”が地球温暖化対策の1つのポイントになります。CO2排出をともなう火力発電を、原子力発電や再生可能エネルギーに切り替えることで、温室効果ガスの排出量は大きく削減することが可能です。2015年6月1日には、政府により2030年度の望ましい電源構成(ベストミックス)案が発表されましたが、その原子力発電、再生可能エネルギーが占める割合には、現状と大きな乖離があります。

――――――――――――――――――――――――――――――

 

本レポートでは、特に原子力発電、再生可能エネルギーにフォーカスして、気候変動、地球温暖化対策に関する人々の認知や理解に関するアンケート調査を実施しました。その上で、環境やエネルギーに関する問題に精通する、東京大学の客員准教授である松本 真由美氏に取材を行いました。

 

 

■1. G7から地球温暖化対策まで、500名を対象にアンケート調査を実施

 

今回は、20代~50代の各世代125名ずつ、計500名を対象として、アンケート調査を実施。ドイツで開催されたサミットや気候変動、地球温暖化対策などに関する認知や理解について聞きました。

 

[調査概要]

調査名 : 日本における気候変動や地球温暖化対策への意識に関する調査

調査対象 : 20歳~59歳の男女500名 (※性別・年代別に均等割付)

 ⇒ 20代男性:62名、30代男性:63名、40代男性:63名、50代男性:62名

 ⇒ 20代女性:63名、30代女性:62名、40代女性:62名、50代女性:63名

調査期間 : 2015年6月10日(水)~2015年6月12日(金)

調査方法 : インターネット調査

調査実施機関 : 楽天リサーチ株式会社

 

◆ G7サミット開催の認知率は58%… その背景には「温室効果ガス&温暖化問題」への関心度の高さ

 

先日の主要7カ国首脳会議(G7サミット)の開催を受けて、はじめに、「2015年6月にG7サミットが開催されたことを知っていますか?」とたずねたところ、「知っている」と回答したのは58%。その認知度はおよそ6割で、半数以上を占めます。本調査を開始したのは、G7サミットが閉幕した翌日です。その日には、テレビや新聞など、各メディアでもG7に関する話題が大きく取りあげました。こうした状況も後押しし、G7サミット実施の認知率が高められたと言えるかもしれません。

そのG7サミットにおいて注目されていたテーマの1つが、地球温暖化対策に関する議論です。今回のG7サミットの議長国であるドイツの首相・メルケル氏は、「気候変動担当首相」という異名を持ち、「地球温暖化対策に効果があり、かつ、各国が実現可能な削減目標」を打ち出すことをサミットにおける重要課題に位置付けてきました。こうした中で実際に合意されたのが、「2050年までに世界の温室効果ガスを2010年比で40~70%の幅の上方に削減する」という目標です。

ちなみに、「温室効果ガスの排出量と地球温暖化問題」については、「関心がある」という人は70%にのぼります。多数派となる約7割の人が関心を示し、地球温暖化への関心度の高さを垣間見ることができたと言えるでしょう。

 

◆ 日本の温室効果ガス削減のカギは… 求められる、「電源構成のベストミックス」

 

地球温暖化対策には、世界的な枠組みで取り組んでいかなければなりません。その上で、各国が自国に課された責任を十分に果たすことが重要です。そこで、日本の温室効果ガスの削減に対する人々の理解について調べました。

「日本の温室効果ガスの排出量削減に期待できると思う方法」を複数回答形式で答えてもらったところ、最多となったのは、「太陽光発電の利用」(51%)という回答。2位と3位には、「省エネ技術の利用」(46%)と「新たな省エネ技術の開発」(45%)が続きます。日本では、新エネルギーや新技術に期待する人が多いようです。

しかし、日本の省エネ技術は世界的に高い水準にあるものの、これまでも積極的に取り組んできた経緯もあり、省エネ技術による温室効果ガスの排出量削減効果の余地は限定的だと言われています。それだけでは大幅な改善は期待できないでしょう。そこで重要になるのが、電源構成のベストミックスです。様々な発電方法において、完璧な手法はありません。それぞれの発電方法のメリットとデメリットを組み合わせて、バランス良く発電することが重要です。

その中で、温室効果ガスの排出量削減に期待されるのが「太陽光発電」と「原子力発電」です。

例えば、政府による2030年のベストミックス案では、原子力発電のシェアは20~22%。現在の1%を大きく上回り、政府の試算でも、温室効果ガスの削減において原子力発電の役割が期待されていることが分かります。しかし、「日本の温室効果ガスの排出量削減に期待できると思う方法」に対して「原子力発電の利用」と答えた人は、僅かに15%でした。決して多い結果とは言えません。原子力発電の本来の温室効果ガスの削減効果を考えると、十分な評価を得られていないというのが実情だと言えるでしょう。

 

◆ 温室効果ガス削減に期待される「原子力発電」&「太陽光発電」… 両者の理解の差が明らかに!

 

前述の通り、温室効果ガスの排出量削減のためには電源構成のベストミックスが重要なポイントになります。しかし、本来注目されるべき、温室効果ガスの排出量が少ない「原子力発電」と「太陽光発電」という2つの発電方法への期待値は大きく異なりました。ここでは、こうした期待値の違いの要因を探ります。期待値の差を生んでいる一因としては、原子力発電の事故リスクなどもあるでしょう。しかし、原因はそれだけなのでしょうか。それを探るため、「発電方法のイメージ」をそれぞれ複数回答形式で答えてもらいました。

「原子力発電」と「太陽光発電」のイメージには、大きな違いが見られました。太陽光発電については、「自然環境に与える影響が小さい」(75%)、「人の健康に与える影響が小さい」(75%)という回答が突出して多いことが分かります。環境や健康へのリスクが小さいというのが、太陽光発電の最大のイメージのようです。一方で、「温室効果ガスの排出量が少ない」の回答率を比較してみると、「太陽光発電」が70%だったのに対して、「原子力発電」は36%で、およそ半分にとどまります。温室効果ガスの排出量にフォーカスするのであれば、原子力発電は太陽光発電に必ずしも劣ることはありませんが、その理解は十分には得られていないようです。

そこで、「原子力発電所に関して、あなたが知りたいと思うこと」を複数回答形式でたずねたところ、上位に並んだのは「安全対策」(59%)、「廃棄物処理・処分」(56%)、「放射能の影響」(53%)、「被爆リスク」(52%)と、いずれもリスクに関する項目でした。東日本大震災以降、原子力発電はリスクが大きいものというイメージがあるようです。その結果、メリットへの理解が妨げられてしまっているという一面もあるでしょう。原子力発電については、安全対策やリスク管理について十分な発信を行い、徐々に正しい理解を広げることが重要です。

しかし、リスクがあるのは原子力発電ばかりではありません。例えば、顕在化していない一面もあるものの、気候変動を引き起こしかねない地球温暖化のリスクは非常に大きなものだと言えます。また、ここ数年間の電気料金の値上げの流れが続けば、経済的なリスクとなりかねません。こうした様々なリスクに対して、そのメリットも考慮しつつ総合的に評価することが求められます。それぞれの発電方法のメリットとデメリットを組み合わせて、リスクを最小化するベストミックスを実現するためにも、それぞれの発電方法に関する正しい理解やリスクへの適切な対処方法が検討されなければなりません。

 

 

■2. 東京大学・松本 真由美氏に聞く、温室効果ガス削減に向けた今後の展望

 

今回のアンケート調査の結果を踏まえて、G7サミットの首脳宣言や地球温暖化対策について詳しく聞くために、東京大学の客員准教授を務める松本 真由美氏に取材を依頼。環境やエネルギーに関する問題に精通する松本氏に、G7サミットでの合意内容や、今後の温室効果ガス削減に向けて求められるポイントについてお話をうかがいました。

 

◆ IPCCの報告に基づく温室効果ガスの削減目標… 目指すのは2100年の気温上昇2℃未満

Q. G7サミットで合意された温室効果ガスの削減目標について、どのように思われますか?

 

G7サミットでの温室効果ガスの削減目標は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次評価報告書に基づいたものです。IPCCでは、「世界における気温上昇の幅を2℃未満に抑えるためには、温室効果ガスの排出量を、2050年までに2010年比で40~70%削減しなければならず、また、2100年には0、あるいは、マイナスにしなければならない」と提言しています。今回の削減目標は、科学的見地に基づいた地球温暖化対策として意欲ある目標だと思われます。

気候変動問題は真剣に取り組むべき世界共通の課題です。学術的な機関であるIPCCの知見を組み入れた削減目標を掲げることで、G7として、2100年までの地球の気温上昇を2℃未満に抑制するという意思をアピールしたと言えるでしょう。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

[IPCC(気候変動に関する政府間パネル)とは]

 

国際的な専門家により構成されるIPCCは、地球温暖化に関する科学的な研究のために設立された政府間機構です。

学術的な視点に基づき、地球温暖化に関する対策技術や政策の実現性やその効果、あるいは、想定される被害結果などの評価を行い、その科学的な見解を全世界に提供しています。

――――――――――――――――――――――――――――――

 

◆ カギを握る「再生可能エネルギー」と「原子力発電」… ベストミックスの実現のためのポイントを解説

Q. この温室効果ガスの削減目標に対して、日本ではどのように取り組んでいくべきだと思いますか?

 

地球温暖化対策にとっては、2015年は節目となる非常に重要な年です。

今回のG7サミットでの温室効果ガスの削減目標の合意は、2015年12月の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)を見据えたものです。パリで開催されるCOP21においては、「新しい地球温暖化対策の枠組みが、国際的な合意を得られるか」というところで注目されています。途上国も含めた形で合意を得なければなりませんが、途上国の間では、「温暖化は先進国の責任」、あるいは、「温室効果ガスの排出量削減は経済発展の妨げ」といった主張も根強いです。G7各国には、国際的な駆け引きの中で、何としても途上国の合意を引き出すという強い覚悟が求められていると言えるでしょう。

日本においても、政府により「2030年までに2013年比26%の温室効果ガスの排出量削減」という目標が掲げられました。2011年の原子力発電所の稼働停止以降、火力発電の比率が上昇している日本においては、温室効果ガスの排出量が増加してしまっているのが現状です。批判の声も少なくありません。国際的な信頼を回復するためにも、自国にて設定した目標は、何としても達成しなければなりません。

そこで重要になってくるのが、電源構成のベストミックスです。G7サミットにおいて、安倍首相は「原子力を重要なベースロード電源として安全性を前提に活用していく」と説明しましたが、電源構成をできるだけ低炭素電源、もしくは、石炭火力のガス化などの低炭素な発電方式に変えることで、温室効果ガスの排出量を大きく削減することが期待されます。ポイントになるのは、太陽光発電を中心とする再生可能エネルギーと原子力発電です。

再生可能エネルギーについては、政府が提示したベストミックスにおいて、エネルギー比率を10%から2倍以上の22~24%に増やすという計画が提示されました。私個人としては、再生可能エネルギーの導入拡大は世界的な潮流ですので、もう少し高い目標を掲げてほしいところです。しかし、再エネ賦課金や今後必要となる送電網などのインフラ整備といった経済性の観点が考慮され、この目標値になったと思われます。今回のアンケート調査でも太陽光発電の受容性が非常に高かったそうですが、今後クリーンな再生可能エネルギーが担う役割は非常に大きいと考えています。日本の技術が活かせることも強みです。

しかし、再生可能エネルギーと一言にいっても、地熱やバイオマスは安定的に発電できますが、太陽光や風力は天候などにより発電量が変動する変動電源です。再生可能エネルギーの大量導入時代に向けて電力の需給調整は大きな課題ですが、できるだけ経済性の高い方法で電力システムに再生可能エネルギーを協調させていくことが望ましいと思います。

発電コストも、再生可能エネルギーの普及に向けて1つの課題となります。欧米では安く競争力のある電源である風力発電も含めて、日本では再生可能エネルギー全般において高コストですので、発電コスト低減に向けた一層の努力が必要です。また、現在、固定価格買取制度の見直しがされていますが、再エネ賦課金の増大による電気料金の値上げで国民負担が大きくなり過ぎないように配慮しなければなりません。低所得者ほど負担が大きくなる電気料金の値上げの逆進性についても、しっかりと対策を練るべきでしょう。国家間の電力系統同士をつなぐ送電線、国際連系線により隣国との電力のやり取りが可能なEUと比較すると、自国内で需給調整を図らなくてはならない日本では、再生可能エネルギー拡大のハードルも異なります。コスト、安定供給といったこれらの課題に対して官民連携で真摯に取り組まなければ、再生可能エネルギーの飛躍的な普及は難しいです。

また、こうした再生可能エネルギーの課題を考慮すると、「安全性が大前提にはなりますが、原子力発電所の再稼動がなければ温室効果ガスの削減目標の達成は難しい」のが実情ではないかと思います。確かに事故のリスクを抱えているものの、原子力発電は大量の電力を安定的に供給できる低炭素電源であることをIPCCやIEA(国際エネルギー機関)は提唱しています。

しかし、福島事故後4年経った今も、原子力発電は安全性やリスク管理の観点において、国民の信頼を回復できていません。「原子力規制委員会」の規定に則って安全性を追及しつつ、事業者側のリスク管理の意識向上を高め、国民に対するコミュニケーションなどを通じた安全文化の醸成が求められています。科学的に安全性を提示するだけではなく、国民や地域社会とコミュニケーションを重ねることも重要です。そうした対話活動においては、分かりやすさや情報の透明性はもちろんですが、国や事業者には、国民が知りたい情報や疑問に答えていく市民リテラシーが求められます。意見の対立に直面しても双方向のコミュニケーションは不可欠で、信頼を再構築することが求められているのです。

 

◆松本 真由美(まつもと まゆみ)

-研究者・准教授-

 

東京大学教養学部附属教養教育高度化機構 環境エネルギー科学特別部門 客員准教授。

専門は環境/科学技術コミュニケーション。

大学在学中から、報道番組のキャスター、レポーター、ディレクターとして幅広く取材活動を行う。

2008年より東京大学での環境・エネルギー分野の研究・教育活動に携わる。

大学での活動の一方、執筆等で環境・エネルギーの視点から持続可能な社会のあり方を追求する。

NPO法人国際環境経済研究所・理事も務める。

 

東京大学教養学部附属教養教育高度化機構 HP

URL: http://www.komex.c.u-tokyo.ac.jp

 



■このリリースに関するお問い合わせや取材、資料ご希望の方は下記までご連絡ください■

トレンド総研( http://www.trendsoken.com/
担当:川浦 真吾(かわうら しんご)
TEL:03-5774-8871
FAX:03-5774-8872
mail:info@trendsoken.com


トレンド総研の関連ニュースリリースはこちらをご覧ください。