生活者の意識・実態に関する調査を行うトレンド総研(東京都渋谷区、URL:http://www.trendsoken.com/)では、今回、電力・エネルギーに関する2つの調査を発表します。その第1弾となるのが、今回の「“エネルギー自給率”と“エネルギーセキュリティ”に関するレポート」です。


「今、岐路に立つ、日本のエネルギー計画」第1弾 牛肉・小麦より低い“エネルギー自給率”、6%の実態とは!? 専門家・小山堅氏が解説する“エネルギーセキュリティ”

◆ 今、なぜ、電力・エネルギーに注目するのか…

2011年3月の東日本大震災以降、日本の“電力事情”は大きく変化しました。福島第一原子力発電所の事故の後、国内の原子力発電所は順次運転を停止し、間もなく震災後丸4年を迎える今も、国内の全ての原子力発電所が運転を停止しています。また、その影響により、火力発電への依存度が急速に高まり、2010年度には6割程度であった火力発電の割合は、2013年度には88%に上昇しています。注目度の高い再生可能エネルギーも、その発電量は微増にとどまっているのが現状です。
その結果、現在の日本の電源構成比は、非常に歪な状態にあると言えます。電源構成比とは、火力、原子力、再生可能エネルギーといった、発電方法ごとの発電量の割合を指します。経済や社会にとって不可欠な電力ですが、発電方法ごとの特徴は大きく異なります。本来は、それぞれの発電方法の長所と短所を組み合わせて、バランス良く利用しなければなりません。火力発電のみが急増してしまった結果、化石燃料の輸入増加により貿易赤字は膨らみ、温室効果ガスの排出量も増加してしまいました。経済や資源、環境の観点から、日本の電力・エネルギー計画の見直しが求められています。
そのような中、先日2015年1月30日(金)には、経済産業省の有識者会議「長期エネルギー需給見通し小委員会」の初会合が開催され、2030年の電源構成比に関する議論が開始されました。また、原子力規制委員会は新規制基準に基づき、関西電力高浜原子力発電所の再稼働を前提とする審査への合格を、2015年2月12日(木)に発表しました。今後、原子力発電所の再稼働に向けた議論の加熱も予想されるところです。
今まさに、日本の電力・エネルギーにおける中長期計画は大きな分岐点を迎えようとしています。

日本の電力・エネルギーは、大きな岐路にあります。しかし、こうした現状を生活者はどの程度認識しているのでしょうか。今回は、“エネルギー自給率”と“エネルギーセキュリティ”という2つのテーマにフォーカスし、調査を行いました。


■ 1. 約7割が「想像以上に低かった」… “エネルギー自給率”の実態に迫る

ここ数年間で発電量が急増した日本の火力発電は、その燃料の大半を輸入に頼っているという課題を抱えています。そこで、重要になってくるのが、“エネルギー自給率”と“エネルギーセキュリティ”という概念です。経済や社会の基盤となる電力の安定供給について考えるためには、これらの概念が、しっかり理解されていなければなりません。人々の“エネルギー自給率”の理解度や“エネルギーセキュリティ”への意識を探るべく、20代~50代の男女500名を対象にアンケート調査を行いました。

[調査概要]
調査名 : 日本のエネルギーセキュリティに関する意識・実態調査
調査対象 : 20歳~59歳の男女500名(※ 性別・年代別に均等割付)
 ⇒ 20代男性:62名、30代男性:63名、40代男性:63名、50代男性:62名
 ⇒ 20代女性:63名、30代女性:62名、40代女性:62名、50代女性:63名
調査期間 : 2015年2月10日(火)~2015年2月13日(金)
調査方法 : インターネット調査
調査実施機関 : 楽天リサーチ株式会社

◆ 重要度を増す“エネルギー自給率”、認知度76%も理解度はわずか18%にとどまる

我々が利用している電力・エネルギーは、石油や天然ガス、太陽光、風力などを元に作られています。“エネルギー自給率”とは、「その国で利用しているエネルギーの内、自国の原料をもとにしたものの割合」を指します。では、この“エネルギー自給率”というワードを、人々はどの程度理解しているものなのでしょうか。電力やエネルギーにまつわる7つのワードと共に、それぞれの認知度や理解度を探りました。

(1)エネルギー自給率
(2)再生可能エネルギー
(3)自然エネルギー
(4)京都議定書
(5)エネルギー基本計画
(6)シェールガス
(7)カーボンオフセット
(8)エネルギーミックス

その結果、“エネルギー自給率”というワードを耳にしたことがあるという人の割合、認知度は76%にのぼりました。認知度が半数を下回った「エネルギーミックス」などのワードもある中で、“エネルギー自給率”の認知度は比較的に高い結果であったと言えるでしょう。
同様に、これらのワードの理解度についても調べました。すると、「総供給エネルギー中に再生可能エネルギーが占める割合。(大阪府・男性44歳)」といったように思っている人もいて、“エネルギー自給率”の理解度は18%にとどまります。その他の7つのワードについても、いずれも理解度が3割を下回るという結果に。電力やエネルギーに関するテーマは、なかなか親しみづらい内容なのか、十分な理解は得られていないようです。政治、経済、技術、国際問題と、関連する領域が多岐にわたるのも、原因の1つでしょう。しかし、今後重要性を増すことが想定される電力・エネルギー問題ですので、その理解を広めるために、これまで以上の努力が求められるところだと言えるでしょう。

◆ 牛肉、小麦、大豆よりも低い“エネルギーの自給率”、6%の実態に71%が「思ったよりも低かった」

それでは、日本の“エネルギー自給率”は、どの程度低いものなのでしょうか。国際エネルギー機関(International Energy Agency、IEA)によると、2012年の日本の“エネルギー自給率”は、OECD(経済協力開発機構)に加盟する先進国34ヶ国中33位。下から2国目です。先進各国の中でも、特に“エネルギー自給率”が低い国であることが分かります。
こうした日本の“エネルギー自給率”の低さは、一般の人々の中でどの程度認識されているのでしょうか。“エネルギー自給率”の説明を行った上で、OECDに加盟する先進国34ヶ国を提示し、「先進各国34ヶ国の中で、日本の“エネルギー自給率”は何位だと思いますか?」という質問に対して、1位~34位の中から1つ選んでもらう形式で回答してもらいました。すると、正解である「33位」と回答した人は13%。前後である「30位~32位」(29%)、「34位」(16%)も合わせると半数を大きく上回り、6割近くの人が「30位以降」と回答する結果になりました。平均順位も「26.6位」で、一般的にも、日本の“エネルギー自給率”はかなり低いものだと思われているようにうかがえます。
その一方で、「現在の日本の“エネルギー自給率”」を予想してもらったところ、その回答の平均値は「28.2%」でした。実際の「6%」とは大きく乖離する結果だと言えるでしょう。

◆ 日本の“エネルギー自給率”と“食料自給率”

資源が乏しい日本では、以前より、先進国の中でも“エネルギー自給率”は低い傾向にありました。しかし、東日本大震災をきっかけに火力発電への依存度が高まるにつれて化石燃料の輸入が増え、“エネルギー自給率”はいっそう下がってしまいました。その結果が、2012年の6.0%という、現在の日本の“エネルギー自給率”です。(※6.0%というのは、原子力を国産エネルギーとして計算した場合の数値です。原子力を除いた場合の“エネルギー自給率”は5.4%になります。)
この“エネルギー自給率”がどれ程低いのかを比較するために、食料自給率と比較してみましょう。
食料自給率は、“エネルギー自給率”とよく似た考え方で、「国内で消費される食料の内、国産のものが占める割合」をさします。農林水産省によると、2012年度における日本の食料自給率は39%で、決して高い数値とは言えませんが、“エネルギー自給率”に比べると、ずいぶん高いことが分かります。
また、食品の主要な品目別の自給率と比較しても、米(100%)、小麦(12%)、大豆(7%)、リンゴ(55%)、牛肉(41%)、魚介類(55%)のいずれよりも低い自給率であることが、分かりました。

さらに、こうした食料自給率や“エネルギー自給率”の実態を提示した上で、「6.0%という、2012年の日本の“エネルギー自給率”について、どのように感じましたか?」とたずねたところ、「思った通りだった」という人は23%。その他、大多数の人は「思ったよりもずっと低かった」(37%)、「思ったよりも低かった」(34%)と回答しており、「思ったより高かった」という人は、わずかに6%のみです。多くの人に低いと思われている日本の“エネルギー自給率”ですが、その実態は想像以上であることが分かります。
また、こうした“エネルギー自給率”の実態に対して、不安に感じたり、心配になったりするという人も多いようです。前述の質問の後、「日本の“エネルギー自給率”について知った感想」を自由回答形式で聞いたところ、「思っていたよりもずっと“エネルギー自給率”が低くてショックを受けました。災害などの異常事態が起きた時のことが心配です。(静岡県・女性34歳)」、「日本の自給率がとても低いことに、驚きました。もっとエネルギーを大切にしたいと思いました。(大阪府・女性55歳)」といった回答が見られました。改めて知る日本の“エネルギー自給率”の低さに驚きを隠せない人々の様子が垣間見られます。
ちなみに、火力発電の燃料の内、原油を調達している地域として、最も大きなところを占めるのは中東地域です。最近の動向からも分かるように、中東地域に地政学的なリスクがあることは否めません。そのため、“エネルギー自給率”に課題を持つ日本は、電力の安定供給という面において、大きな懸念材料を抱えていると言わざるを得ないでしょう。

◆ 求められる“エネルギー自給率”の向上… 期待度No.1は「再生可能エネルギー」

こうした結果を受け、“エネルギー自給率”の将来のあるべき姿についても考えてみましょう。
まず、「“エネルギー自給率”を向上させていく必要はあると思いますか?」と聞いたところ、68%の人が「必要がある」と回答しました。また、「必要がない」という人には、その理由をたずねましたが、「エネルギー自給率を上げるためとは言え、原子力発電はコストとリスクが莫大過ぎる。(大阪府・男性43歳)」というように、他のリスクとの兼ね合いを気にする人が大多数でした。
それでは、“エネルギー自給率”を向上させるためには、どういった方法が必要だと思われているのでしょうか。最後に、「“エネルギー自給率”を上げるために、特に必要だと思うこと」を複数回答形式でたずねました。その結果、最も多かった回答は、「省エネ技術の革新」(66%)。以下、「太陽光発電の拡大」(64%)、「地熱エネルギーの拡大」(53%)、「消費者の節電意識の向上」(51%)と続きます。再生可能エネルギーの期待度の高さと、省エネ・節電への意識の高さが浮き彫りになる結果となりました。


■ 2. 専門家・小山堅氏に聞く、エネルギーセキュリティの重要性

今回のアンケート調査からは、人々の想像以上に低い日本の“エネルギー自給率”についての認識の実態が明らかになりました。その実態を知った人たちからあげられたのは、現在の“エネルギー自給率”に対する不安の声です。
電力の安定供給にとって重要な要素となる“エネルギー自給率”。その「“エネルギー自給率”の向上」も含め、エネルギーの安定供給のために様々な方策を講じることを「エネルギーセキュリティ」と呼びます。この“エネルギーセキュリティ”について、日本エネルギー経済研究所の小山 堅氏にお話をうかがいました。

◆ 国際情勢が不透明な今こそ重要性を増す、“エネルギー自給率”と“エネルギーセキュリティ”
Q. “エネルギー自給率”が低いことによるリスクについて、お教え下さい。

「“エネルギー自給率”が低い」ということは、「必要なエネルギーの輸入量が多い」ということです。そのため、国際情勢の影響を受けやすく、非常時には、エネルギーの「値段」が急騰したり、十分な「量」を確保できなくなったりするというリスクがあります。「値段」の上昇や「量」の不足は、国内の経済・産業活動や市民の生活が大きな影響を受けることになります。
さらには、日本として外交政策での意思決定の自由度が失われる危険性もはらんでいます。過去の例で言えば、有名なのは1970年代の「石油危機」です。この時、アラブ諸国は外交カードとして石油の禁輸措置を行いました。その結果、日本を始め石油を輸入に頼る国々、すなわち、“エネルギー自給率”の低い国々は、産油国であるアラブ諸国の外交圧力を甘んじて受け入れなければならないこともありました。
エネルギーは社会・経済の活動を円滑に進める上で欠かせないものです。エネルギーの供給に不安があるような状況を起こしてはなりません。そのためには、様々な観点から総合的に“エネルギーセキュリティ”について考えるべきでしょう。“エネルギー自給率”は、“エネルギーセキュリティ”について考える1つの重要な指標になります。
国際社会の不確実性、不安定性、流動性が増している今、“エネルギー自給率”の重要性は増していると言えるでしょう。

◆ 再生可能エネルギー、メタンハイドレード、原子力、… 特効薬のない“エネルギーセキュリティ”の解決方法は!?
Q. “エネルギー自給率”を高めるためには、どのような方法がありますか?

“エネルギー自給率”を上げるためには、大きく2つの方法があります。「エネルギーを合理的に使い、必要なエネルギー量を減らす方法」と「国産の、あるいは、国産とみなすことができるエネルギーの割合を増やす方法」です。
まず、1番目の方法ですが、これは決して必要なエネルギーを我慢するということではありません。石油危機後、省エネルギー大国として日本が地位を確立してきたように、エネルギーの効率化を通じて、国として効率化を通して必要なエネルギー量を減らすことが重要です。次に、2番目、「国産の、あるいは、国産とみなすことができるエネルギーの割合を増やす方法」についてですが、こうしたエネルギーの候補はいくつかあります。
例えば、再生可能エネルギー。アンケート調査でも、一般の方の注目度の高さも明らかになったそうですが、確かに再生可能エネルギーは、大きな可能性を秘めていると言えるでしょう。温室効果ガスを排出しないので、環境の面でもメリットが大きいです。しかし、その一方で、発電コストが高く、電気料金への影響が懸念されています。また、太陽光や風力発電はその発電量が天候に左右され、不安定であるということも、再生可能エネルギーの大きな課題です。
また、非在来型エネルギーである「メタンハイドレード」も注目されているところです。しかし、日本近海に眠る資源として話題になっているもののまだ実用段階には至っておらず、技術的な課題や経済性の課題を解決していく必要があります。
原子力も1つの有効な発電方法でしょう。まずは、福島第一原子力発電所の事故の真摯な反省を踏まえて、安全性を徹底的に追及することが不可欠です。新たに設立された独立機関「原子力規制委員会」の規制の下で、安全対策を進めなければなりません。しかし、大量の電力を安定的に供給できること、温室効果ガスを排出しないこと、相対的には低コストであること等、大きなメリットも兼ね備えています。安全性の確認されたものから再稼働に向けて、着実に進めていくことが求められています。
“エネルギーセキュリティ”を意識するのであれば、「“エネルギー自給率”を上げる」ということは重要です。どのエネルギー源にも利点と欠点があります。それぞれのエネルギー源・発電方法の欠点の克服を図りながら、バランス良く全てのオプションを活用すべく、電源構成比の見直しを進めていかなければなりません。

◆ 小山 堅(こやま けん)
-研究者-

一般財団法人 日本エネルギー経済研究所 常務理事 首席研究員。東京大学公共政策大学院 特任教授。
1986年に早稲田大学大学院経済学研究科修士課程を修了後、(財)日本エネルギー経済研究所入社。
国際石油、エネルギー情勢の分析、アジア・太平洋地域のエネルギー市場、政策動向の分析、
エネルギー安全保障問題を研究分野とする。経済産業省審議会委員などを多数歴任。
一般財団法人 日本エネルギー経済研究所 HP URL: http://eneken.ieej.or.jp/


(※第2弾となる「エネルギー問題への意識の変化に関するレポート」は、2015年3月17日(火)の発表を予定しています。)



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